クレーム相談室

実際に体験したクレームの報告です。楽しんでもらえるよう小説風にしています。登場する団体や個人の名称等は実在する人物や団体等とは関係ありません。

駐車場のトラブルの解決方法は比較的易しいがしんどい話

マンションの自分専用の駐車場に別の車が停まっており停められないとのクレームがメンテ110番に入った。

 

この手のクレームは精神的に堪えるには堪えるが、それでもほぼマニユアル化してきたから、電話で怒鳴られる苦痛さえ耐えればクレームの中では比較的易しい案件だ。

易しい案件になったのは、過去色々トラブルがあり、その都度直してきた成果だ。

最初はひどかった。

規則通りの対応をしていたから、一件落着させるたび、担当者はぐったりしていた。

 

最初の頃、駐車場のトラブルが入ると、即警察に振っていた。

賃貸会社からそう指示をされていたからだ。

しかし警察を下請け代わりに使っていれば、相手は国家機関、必ずしっぺ返しはされる。

 

やがて我が社からの依頼を渋るようになり、時折「民事不介入」を理由に対応拒否までされる始末。

当たり前と言えば当たり前だ。

電話で、契約以外の車が停まっている、何とかしてください・・なんて依頼、個人からの依頼ならともかく会社組織から何度も依頼されていたら、やがて目をつけられる。

 

本来は契約している、契約者本人から警察に届けてもらうよう依頼するのだが(この方が警察は動いてくれやすい)

しかしメンテ110番からそんな依頼を、停められて怒り心頭のお客様にお願いすれば、メンテ110番の係員が怒鳴られるだけだ。

「何のためにお前らがおるんだ、警察に通報するならお前らがするのが筋だろう」と、正論を言ってくる。

したがってメンテ110番から通報するのだが、対応する警察の管制官によっては、民事不介入を理由に断られるケースもある。

勿論ゴリ押しすれば、現地に警察官を派遣し対応はしてくれるが、その後会社に注意勧告がくる場合もある。

暗にお前ら気安く警察使い過ぎだと。

警察から注意勧告来ると、本社は大騒ぎ、何で勝手に警察通報したのかと担当者がやいのやいのといわれる。
マニュアルでは確かに警察には管理会社の担当者からするようになっているが、そんな事真夜中に出来るはずが無い。
だから暗黙の了解で警察に管理会社抜きで通報するようなっている。
当然上層部も知っている。
しかし問題になると、正論を盾に知らぬ顔をする。

だから駐車トラブルはメンテ110番にとって最大のストレス案件になっていた。

 

人の心理とは面白いもので、順序を少し変えるだけで対応が違ってくる。

警察の心証が悪いのは、我が社の担当が誰も現地に行かず、警察を下請け代わりに使っているからだ。誰かを現地に派遣し、その者ではどうしようもなくなった態で通報すれば、警察はまず間違いなく協力してくれる。

警察管制に知り合いがいるから、そこのところはよくわかっている。

つまり警察に誠意を見せる必要があるのだ。

 

そこで一案を講じた。

我が社は機械警備をやっており、何か問題があれば、何時でも現地に派遣できる人間は確保されている。

ただ部署が別な為、警報以外のトラブルで警備員を派遣することが出来ない。

出来ない理由は単に、社内規定でそうなっているだけだ。

別に法規制でもなんでもない。

しようと思えばいつでもできるのだ。

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現に、他の会社では臨機応変警備員を派遣している。

 

我が社は警備担当部署と、営業部署の管理職同士の仲が悪くいがみ合っていた。

だからトラブル対応には警備員を派遣しないと、妙な意地を張っていた。

意地の張り合いで苦労させられるのは我々だ。馬鹿馬鹿しい限りだ。

 

まず賃貸契約会社の部長さんに入れ知恵をする。

我が社も24時間、内容にもよるが、トラブル時、現場に警備員を派遣できますよと。

出来ない理由は派閥争いによるもので、賃貸会社の方から、少し強硬に頼めば必ず折れるはずだと。日本は外圧に弱い。会社も得意先には弱い。

 

賃貸会社の部長さんは、トラブル時には当社の警備員が現地に行ってくれているものだと勘違いされていた。実際のトラブルが賃貸会社に降りかからなかったからわからなかったのだ。

そこで現状は社内規定で移動させられない現実だと、チクッテやったのだ。

 

同時に我が社の営業部長にも連絡した。

駐車場トラブルで賃貸会社の担当者とモメ、営業部にクレームがいくかもしれない。

その内容は何故、緊急時我が社の機動を現場に移動させないかとのクレームですと。

営業部長も驚いた。部長も警備員が緊急時は移動しているものとばかり、思っていたようだ。

 

何てことない。我が管制を統括している運営部の部長の一声で派遣禁止になっていただけなのだ。

 

予定通り、賃貸会社の部長経由で、我が社の営業部長、営業部長経由で、運営部長とクレームが順次降りて行き、結局緊急時は警備員を派遣するよう通達が出たのだ。警備員を派遣してもいいではなく、派遣しなさいと、完全な命令だ。

社内の権力構図は、運営部長より、営業部長の方が上だ。

営業部は会社の売り上げを一手に担っている部だ。

その気になれば運営部長など飛ばせる権限は持っている。

 

それ以降、駐車トラブルが発生したらまず現場に機動隊を派遣させる。

現地を機動隊で確認後、警察に通報し指示を仰ぐ。

警察管制も、現地に警備員がいると対応が違ってくる。

とりあえず無視はできない。

正式に現地を確認後、どうしようもないので依頼しているのだから、民事不介入を理由に断り、後々何かあれば断った係官個人の責任問題になる。

どの組織も構図は似たり寄ったりだ。

問題が起これば、とにかくその当事者がまずは悪者に仕立て上げられる。

 

現地に誰かが行って、現場を確認後通報するのと、現地に誰も行かず、単に電話だけで通報するのとでは、天と地ほどの対応の差が生じるのだ。建前はどうあれ、現実は人の感情で動いている。

 

おかげで、駐車場のトラブル対応は格段に楽になった。

現地に機動を行かせ、不法駐車の車のナンバープレートを読み取らせ、その番号を警察管制に伝える。

すると警察はデーターベースを使い直ちに該当車両の持ち主に連絡し、車は直ぐ移動する・・・

と、一連の対応マニュアルが出来上がってしまった。

 

時折所有者に連絡がつかない場合もあるが、その場合は駐車場の持ち主に、警察でも持ち主がわからなかった事と、車は別の駐車場に停めていただき、その間の駐車料金はこちらで持つ旨説明すれば、シブシブではあるが納得していただける。

 

それでも駐車場トラブルは神経が参る。

罵詈雑言を浴びせられるのは健康によくない。

体重を落としたい人は、なまじダイエットをするより、我が社のメンテ110番に入社するといい。

 

しかし、我が職場の周りを見渡せば、太った従業員が多い。

これは、ダイエットに効くとはいえないのかな?