クレーム相談室

実際に体験したクレームの報告です。楽しんでもらえるよう小説風にしています。登場する団体や個人の名称等は実在する人物や団体等とは関係ありません。

女性アルバイトが退職するのを防ぐポイント

クレーム対応から帰宅するとアルバイト社員のS子さんが泣いていた。

どうしたの? と残ったバイトのA子に聞いても「知らない!」と素っ気ない。

二人の間に何かあったのだとは容易に想像がつく。

 

また喧嘩か。げんなりする。

しかし早急に対応しないとS子さん辞めてしまう。

女子職員の対応は男子職員と異なる。

悩んでいるうちはその悩みを表に出さない。

辞めるかも? と噂になりだしたら、もう遅い。

その時は辞めると決めた時だ。

だから、対策は危ういと思ったその時に始めなければならない。

とにかく共感してあげなければ、事態は悪い方にしか転がらない。

 

メンテ110番の対応者は現在6名プラス正社員。

 

原則は6名のアルバイト社員で回しているのだが、対応は24時間やっている。

アルバイトは10時から22時までの交代制業務。

泊まり込んでの業務はしない。

別に禁止されているわけではないのだが、する人がいないのだ。

してくださいと頼んでもやってくれない。

強制すれば辞めていく。

 

辞める理由は、はっきりしている。

業務内容に比して、給料が安すぎるからだ。

もう少し時間単価を上げれば、残ってくれる人もいるだろうが、それでは採算が合わない。

元々、採算を度外視して引き受けている業務だ。

会社本体も力など入れていない。

 

しかたがないので残りの時間、すなわち、22時から翌10時までは正社員が対応する。

対応するといっても、別業務をしている者が、クレーム対応を引き継ぐだけなのだが。

 

結局シワ寄せは正社員に降りかかる。

元々嫌われ社員の行きつく先の、管制業務だ。

管制と聞けば聞こえがいい。

航空管制、自衛隊の管制、業務の指揮系統の中心だ。

勿論我が社も、管制業務だけなら花形だ。

 

しかしこれに付属するものが辛い。

業務の辛さの8割が、実はこの付属する付帯業務だ。

だから、管制に赴任してきた心清い人は、実際の業務をするにあたり、心折れる。

結局辞めていく。残るのは心、汚い・・・否強い人ばかりになる。

 

そうそう、アルバイトS子さんの話だった。

結局、別室で話を聞き、悪者を係長にし、2人で係長の悪口言い合ったらスッキリしたのか業務に戻った。

喧嘩が泣いた直接の原因だが、本音の不満は別のところにあったのだ。

 

現在6名いるアルバイトも前は2名だけだった。

それが、賃貸会社のクレーム対応業務を引き受けるにあたり、4名が増強されたのだ。

 

この増強時のバイト募集も大変だった。

バイトが集まらないのだ。集まっても1日きて翌日辞めてしまう。

理由は私なりにはわかっているが、言えば越権行為、嫌われるだけで私に何のメリットもない。

 

やっと1名入った。経験者だ。対応もそつがない。係長大喜び。

1つ問題があった。パソコン処理が全くできないのだ。

これは致命的だ。

パソコンの知識がある程度無ければ、対応が難しい業務だ。

教育すればいいのだが、する人がいない。

皆忙しい。教育係など係長ぐらいしかいない。だから係長がした。

ところがこの係長、朴念仁。真面目が服着ているお方だ。

人間の感情の機微を見るのは苦手ときている。

女子は仕事ではなく人間関係が重要だというのに。

 

やがてアルバイトもなんとか4名揃った。

当然アルバイトの教育係も係長だ。

皆、そこそこの経験者だ。クレーム担当など、在る程度経験してないとカルチャーショックを受け、中々できない。酷いときは鬱にもなる。

 

1人の時は問題なかったが、4人そろうと彼女のパソコン音痴がやはり問題になる。

少しは申し訳なさそうな顔をすればいいのだが、先輩面して、パソコン業務は全て

新人に任せた。

これに残り3名が怒ったらしい。対策を打たないと辞めると。

・・・とまあ、これは係長が私に説明した話なのだが。

 

3名同時に辞めると言っている、解決策は1つある。

原因は古株お局にあるから、お局を辞めさせれば3名は残るはずという。

だからお局に辞めるよう言ってほしいと。

 

自分で言えよ、それがあんたの仕事だろ、とまあ、そのクレームは置いとくとして

お局を辞めさせても、クーデターは収まらない。

本質を見極めていない。

係長、女性の心理を軽く見ている。つまり甘すぎる。

クーデター側が必ず一枚岩とは限らない。

そもそも、3名同時に辞めると言っているが、それが本心かどうかもわからない。

女子の言葉を額面通り受け止めたら酷い目にあう。

たかがパソコンぐらいで、会社辞めるなんて言わないよ。しかも3名揃って。

原因は他にあるはず。それを突き止めねば。

 

まずお局様と飲みに行った。

幸い私はアルバイト女子4名とは仲が良い。

入社当日から、暇を見つけては彼女らの所に行き、ウダ話をしていた。

正社員とアルバイトの垣根は壊さないといけない。

何度か飲みにも行っている。

ここはお局様の本心を聞かねばならない。

 

その後、残り3名の女子と飲みに。

次に二人ずつ、最後に4名全員で飲みに行った。

これぐらいしつこく飲みに誘えば、彼女らとて私の本音はわかるはずだ。

トラブルには必ず原因がある。

その原因を見つければ、おのずとトラブルは解消する。

お酒の空間には本音を誘発する魔力がある。

心理的誘導で本音も聞きやすくなる。

 

なぜこうしたか、彼女らの本音が聞けた。

彼女らの不満の原点はお局様ではなかった。

 

お局様に聞いて、不満が係長。

残り3人に聞いても不満は係長。

 

要は係長に不満があったのだ。

 

改善案を言っても「ふーん」と言うだけで善処してくれない。

3人が入社した時も、管制課員には紹介もせず、いきなり仕事開始。

朝礼、終礼にも参加しなくていいし、歓迎会すらない。

つまり、出始めから係長間違っていたのだ。

アルバイトを差別している、そう思われてしまったのだ。

 

係長が仕事に真摯で、分け隔てなく仕事をすることは、管制員は知っている。

しかし初めて接するアルバイトは、それを冷淡な人だと受け取ったようだ。

初めての印象は、後々まで響く。

輪をかけての新人訓練。

嫌われちゃったみたいだ。

 

結局、月1で飲み会を開く、その時他の連中も誘う

そんな話を、飲みの席で少しずつ決めていき

ワイワイ、がやがや、係長には悪いが、彼を悪者して盛り上がれば

辞める話などどこかに消し飛んでしまった。

 

「彼女ら辞めるの、辞めました」

「あ、そ」

 

なんともあっけない返事。

何故とか、どうしたとか、何も聞かない。

ま、係長らしいと言えばそれまでだが。